ワインの風味(香りと味)その6
ボージョレイが今面白い。
ヌーボーブームもやや落ち着きを見せた昨シーズン。
ガメイの世界で、伝統にもとずいた本格的なワイン造りが注目され始めている。
それまでの工業製品化したワインから、本来の農産物としてワインを位置づけ、根底にあり最も重要なブドウ栽培から見つめ直す。
自然との調和の中のブドウ栽培。大切にする事、愛情をもって育てる事は決して過保護であってはならない。その意味からビオ・ディナミに沿った農事の実践は好適と言える。
しかし、昨今のビオ・ディナミ礼賛の中で、天体の運行に合わせて農事を行う事をややもすると「宗教的」と評する向きもある。
しかし、人間主体の世界観を自然主体に切り替えると、面白いように謎が解ける。
例えば、ワインを瓶詰めするのは何時がいいのか、これは月の満ち引きが答えを出してくれる。
また、かつての我が国の暦こそは、天体の運行に合わせ農事を司る際に最も頼りとするものであった。
人は満ち潮に生まれ、引き潮に死んで行く。このことが人間は天体の運行の中、広く言えば宇宙(自然)の中のひとつの生命体であることの証であり、この様な天体との関連付けが即宗教に結びつくものではない。
それは、むしろ自然の摂理であり、我々人間は自然の中の一員として自然の中で自然に自然なモノを造りまた自然に還すべきなのである。
600年程の昔、コート・ドールから消滅させられたガメイが今本当の意味でのルネッサンスをボージョレイで迎えようとしている。
店主 那須